2024年10月24日木曜日

2024.10.25 円明園。

政治とか、歴史とか、普段家族と話し合うことはあんまりない。

触れてはいけないことが多すぎるから。


今年の夏、北京旅行の時、円明園に行く予定はなかったけど通りかかった。
息子は突然質問した。「円明園を焼いたあの八国の人は、今でも円明園に来る?叩かれない?」
何処から説明しようかと一瞬躊躇ったけど、「複雑な事情があるから、いずれ詳しく教えよう」とだけ伝えた。
学校で習う歴史なら、都合よく「侵略者が来て焼き払った」としている。今はどうなってるのかわからないが、混乱を避けるために、学校で習った後に説明してあげようか。

と、思ったけど、まさかこんなに早く来るとは心外だった。
小学五年生は歴史の授業なんて受けていないのに、「愛国教育」として円明園についてのドキュメンタリー番組を視聴するように先生に言われた。
僕が晩ご飯を作っているうちに、妻は携帯から番組を再生して息子と二人で見ていた。うっすらと聞こえたけど、あの戦争のいきさつを詳しく説明しているようでまあいいだろうと思った。
しばらくすると、息子はどたばたと台所にやってきた。
「お父さん、なんで説明してくれなかったの?あんなに簡単な話なのに」
「簡単?どこが?」
「英国が広州に入りたかっただろ。拒絶されただろ。入る。ダメ。入る。ダメ。そして戦争を起こして円明園を焼いた」
「あのね」気が遠くなりそうで深呼吸した。「あれはちゃんとしたいきさつがあって」
「はいはい後で先生が説明してくれるのでしょう。先生の説明に従おう」妻が遮ってきた。「歴史の解釈ってそれぞれなのね」
それぞれってところじゃないけど。
都合のいいところだけ強調して、他のことを飛ばす。
それがここの歴史教育の手口だ。
言葉を探してると、妻はこちらをにらみつけた。
あなたがシニカルであることはわかっているから、いらないことを話さないでよとばかりに。
妻は歴史を詳しく知っているわけではない。控えめに言って無知のほうだ。だがまじめな話になると「すぐそんなことを言う」と揶揄う。
僕はただ、「清国も十分な悪だったから、昔の中国だから肩入れしなければならないとの姿勢は良くない」と息子に教えたかった。
まあそれもいらないことだろう。
「とにかくでたらめに善悪を決めつけないで。いい?」
息子は分からなさそうに頷いた。

そしてこの話は終わり、いつものように食事を始めた。
ただ僕だけが、息苦しくなっていた。
たしかに、今の息子にそのようなことを意識させたら、色々まずいことになるかもしれない。
しかしいつ意識させた方がいい?
このまま育ったら僕なんかに教わっても変わるのだろうか?
そもそも僕の考えをちゃんと伝える日がやってくるのだろうか?
また不安と絶望を飲み込んで、這いずり回る一日だった。

2023年9月20日水曜日

2023.08.11 それが、どうした。

倒れていた。
最初は夏風邪だった。
とある暑い午後、妻と息子は風通しの良い部屋の床に茣蓙を敷いてゴロゴロしていた。
ちょっと楽しく混ぜてもらったら眠気に襲われそのまま寝てしまった。
起きたら喉に違和感があって、咳や痰が軽く出た。
だるい感じが少しあったけど熱はなかった。
「コロナ?」
「そんな馬鹿な」
薬飲んで安静にしたら鎮まってきた。
ただの夏風邪だからどうということはなかった。

問題なのは、この前の投稿の洪水以来、あまりにも毒々しかった毎日の出来事が、体に響き過ぎた。
次から次へと洪水の餌食になった村、町、都市。
邪魔者扱いされて追い出された救援隊。
救援を望めなくなってきた人々。
上から神隠しになってた幹部たち。
遮断されていった発信源。
悪名高い赤十字さんはのこのこ出てきて「物はいらないから現金でね」と寄付を募り始めた。
国が被害地域に対して出された援助金は2億元未満。
そして今日、ようやく公式報道されることになった。
河北省全域で29人死亡、16人行方不明。
ふざけんな。
村一つでもとうにそれを超えているだろう。
国「それが、どうした」
今大事なことは、一番金持ちな医療・移民関係者から金をかっさらうこと。
そして、五月蠅い愚民どもを黙らせるために、携帯のアプリを許可制にすること。
それだけ貫けば磐石。
とでも思ってそう。
どんな災難が起きても。
だ。

それだけじゃない。
世界において、中国人は全力で嫌われ者になろうとしている。
いや、もうなっているといっても過言ではないだろう。
大学生運動会の醜態。
ロンドン・ブリックレーンの暴行。
暴徒紛いのネット民。
何もフォローされてない。
むしろ支持されている。
国に。

まとも…とは言えないけど、一応常識者のつもりだ。
こんな国、こんな国民。
一体どこに向かわせてくれる?
まともな死に方をさせてくれる?
何も、見えないや。
そんなこと、誰が聞いてくれる?
いつものように、勝手に絶望しているだけだ。

2023.08.03 それでもあの人の邪悪さ、甘く見すぎた。

昨日からニュースになっているのは、涿(たく)州の水没。
農村から市街まで、ほとんど水没していた。
死者数が出てきていないけど、被害人数は百万を下らないだろう。
どこもかしこも水深数メートル。
村なら高い屋根しか残っていない。

各地から駆けつけた救援隊は、現地に着く前に阻止された。
「現地政府の要請状がない限り救援は認められない」って。
なぜなら、「昔から救援隊が現地の状況を誇大に表現しがちだから手続きを踏まえてもらう」という規定がある。
すなわち、思いもよらない形で現地の状況が語られたら困る。
しかし現地の政府まで水没したから要請状なんて出せなかった。
そのまま引き返った救援隊もあり、小規模で救援を行って「帰れ」と言われた救援隊もある。
民衆の発信源では、政府の手の者が真夜中に堤防を崩して放水し、多くの民衆は何の準備もなく洪水に襲われ、車で逃げようとしても高速道路の入り口で「まず料金を払え」と止められ大きい行列が作られた。
一方、政府は「堤防を崩す通知が出たが誰も気にしなかった」との「民衆の声」を大きく報道し、「被害はあくまでも自己責任」との姿勢を示している。

そもそもなぜ涿州なのか?
平原なので、北京と同じくらい大量の降水を受けても、門頭溝のような津波はできていない。
水は河道に沿って天津の河口まで流れて入海するはずだった。
問題なのは、天津まで、水没してはいけない場所は二つくらいある。
一つは大興国際空港。
空港がダメになったらいろいろ困るのはそれなりに理解できる。
そしてもう一つは雄安新区。
第二首都圏として作られていまだに機能せず、メンツプロジェクトに成り下がっている雄安新区だけど、あの人の功績になる予定だから水没したら大変困る。
もともと雄安新区が作られた場所は白洋淀、大きな湖であり、洪水になったら自然の調節として働く。
はずだった。
万が一でも入れてはいけないから、北京から放流された水を、雄安新区に着くまで放水しなくては。
そこにあったのは、涿州。
市街も、村も、人々も、「多少の犠牲だからしようがない」の一言で済む。
そのうえで自己責任を押し付ける。
肝心のあの人はただ目を逸らして、何事もなかったかのように振舞っている。
いくらなんでもひど過ぎる。むご過ぎる。

文字を書くときは冷静な方が良いと思っている。
冷静じゃない状態で書く文字は醜いと思っている。
だがそれは違うかもしれない。
冷静じゃなくて、無力だ。
畏れ多い僕は、どう頑張ってもか弱い文字しか書けない。
胸の中に満ちている怒りを炸裂させようとしても、何の衝撃も起こせない。
果たして、救いがあるのかな。
僕も、この国も。

2023.07.31 北京洪水。

北京洪水の動画はいくつ流れてきた。
永定河が氾濫し、その上を跨ぐ盧溝橋、そしてすぐ隣の小清河橋が崩壊。
複数の車が河水に漂っている。
近くの村から避難指示が出ている。
避難している村人たちが河となった道路、そして急流に押し流される無数の車を眺めている。その中には人がいるかどうかは確認できない。
とある村人が、家だった廃墟を彷徨って家族を探している。

昔から北京は、水没しやすい都市である。
2009年まで北京に住んでいた頃、豪雨が降るたびに、高架橋の下には深さ2メートルほどの水たまりができる。
後は揉み消されていたかもしれないけど、「高架橋の下には排水溝の蓋が設置されただけで、その下には排水溝が実際作られていない」と、かなり有名な話があった。
とはいえ、無理やり突破しようとしない限り、危険にはならない。
(車を水たまりに突っ込んで動けなくなってそのまま亡くなった運転手があった。確かに一人くらいニュースに出ていた)
だから今度の洪水を耳にすると、またそんな類かなと思ったけど、まさかの山津波だった。

被害地域といえば門頭溝、北京の西部にあたる郊外。
山地だから確かに山津波になりやすい。
だが豪雨とはいえ、数日にわたる豪雨がいきなり津波を起こるなんて、考えられるのは、近くにある青龍湖による放水、じゃないかな。
この国のダムはいつも水を貯めすぎると言われている。
そして雨が多く降るとダムが崩壊する恐れがあり、秘かに放水する。
聞いたことがあるだろう。
2年前の鄭州も全くその通りだった。
もちろん公式では認められていない。
認めてはいけない。
だがこの規模の津波なら、放水以外辻褄が合わない。全然。

雨はまた止んでいないようだ。
このままじゃ何人が亡くなるのだろう。
考えるだけでもゾッとする。
噂では天津まで放水を備えて住民を避難させている。
もうこれ以上被害が出ないように祈るしかない。

追加情報:北京市房山区河北鎮 全体水没、音信不通

2023.07.27 真っ白。

いつもつくづく思っている。
目に映るこの世界は荒唐無稽すぎて、不世出の文才でも、その一欠けらを表現することができない。
凡愚で精神不安定な僕には、一体何ができるというのか。
それでも僕は必死に足掻いている。
虚しいとわかっていても、支えてくれる人がいなくても、これだけは諦めたくない。
今までいろいろ諦めてきたけど、文字さえあれば、何とか生きていける気が。
ま、それも気のせいかも。

よく夢を見ている。
真っ白な雪原を彷徨って、空を眺めながらあてもなく足を運ぶ。
目が覚めていても、気分は雪原。
炎天下で汗をかいても、気分は雪原。
いっそのこと、雪に埋もれたい。
そうすれば、少しでもこの世界から遠ざかるかな。

2023.07.22 おかしい小包。

最近ネットで買い物していないのに、今日いきなり「あなたの宅配便が○○店に留め置きました」とのメッセージがあった。

宅配便とはいえ、今どき家まで届いてくれる業者はほとんどない。
連絡もせず、黙認で専門店(「菜鳥」とか)に留め置く。
店に行って、メッセージに含まれているコードを見せたら、モノを出してくれる。

小さな箱。
振るとカラカラの音がする。
薬やサプリメントの類か。
確かにこの前健康のためにサプリメントを何種類買ったことがあるけど、別に不足やおまけがなかったはずだ。
開けてみると、確かにサプリメント1瓶だ。
レモンと緑茶の抽出物とかダイエット用とかなんとか。
米国産だからそこそこ高価なもので、Taobaoで確認したら300元くらいする。

最近僕宛に何か買ったのかと妻に確認した。
妻「ううん。詐欺かな」
ちょっとググった結果、宅配便詐欺なら、ゴミクズな内容物を伏せて着払いを要求するとか、配送する前に問題が発生したと嘘をついて料金をたばかるとか普通なんだから、当てはまらないな。
Taobaoでこのサプリメントを販売している店はそんなに多くない。
一つずつ確認したら、小包の差出元に該当する店はあるようだ。
だが何らかの形で僕の情報を手に入れたとしても(今どきそんなに難しいことではない)、なんでわざわざ一つ送ってくれるかな。

もちろんそれを飲む気はない。
ただ詐欺ならどんな形でかかってくるかをできる限り想定しておきたい。
詐欺以外は何かあるかな。
毒?ウイルス?放射性物質?
そんな馬鹿な。
別に狙われる理由もないや。
とりあえず放っておくわ。
何があったらまたその時で考える。

2023.07.21 あとどれくらい保てるかな。

最近はメンタルが確実に悪化していると思う。
何もしないほうが良さそうだけど、何かしないと落ち着かない。
とりあえず韓国語の教科書をぼちぼち読んでいる。
そもそも読書という行為は、中途半端な環境や心境では無理だ。
それに息子が夏休みに入ったため、「買い物に行くから付き合って」「午後テコンドーに行くから昼ご飯作って」って、事務所に行く時間も減っていた。
家族団欒ならそれもそれでいい。
あいつらのためなら、できることは全部する。
しかしそれでもこちらがこき使われているだけで、欲しいエネルギー、全然くれていなかった。
むしろ、僕が何かを話したくても、すぐ遮られる。

僕は昔から弱気のほうで、父や母はいつもペラペラ説教していた。
ある日抗議した。「僕の言い分を少しでも聞いてくれよ」と。
すると父が「はい、今からお前が話せ、思う存分に」と言って、唖然とした。
そして先日の食卓で、冗談半分に「お前ら全然話聞いてくれないよな」といったところ、息子が「何話したいか今話したらいいじゃん」と言い放った。
「お前、爺ちゃんにそっくりだな」と苦笑いしただけだった。

息子は好奇心旺盛な年ごろだから、妻に何かを話しようとしてもすぐ食いついて、文字単位で詮索してくる。話を続く気はいともたやすく失う。
そして二人きりの時間もほとんどない。
昼間は言うまでもなく、夜になって息子が寝ると妻もすぐ寝る。
寝なくても携帯に没頭して、話し合う暇はない。
もちろん、妻と息子に愛されていないわけでもない。
ただ二人とも自己中すぎて、僕の優先順位は極めて低いだけだ。
日常の行事はすべて妻が設定する。
どこか息子を連れていく場合、僕を連行する。
僕から「ここ行ってみたいな」と言っても全然乗ってくれない。
暇な時一人で勝手にいけば?ご飯作り、遅れないようにね。
僕は頼み事があっても、いつ実行されるかわからない。
だから稀に「愛してる」とかいちゃついてきても、失礼にならない程度に相槌を打つだけだ。

今日は妻の妹のエンちゃんから「一泊して遊ぼうか」と二人を誘った。
妻「一人で留守番してもいいか」
僕「もちろん、もともと構ってくれていないだろ。楽しんできて」
騒がしい孤独より、一人の孤独はずっと幸せだから。

0時くらいから豪雨が降るそうだ。
少しでも涼しくなってくれ。

2023.07.18 夏休みか。

今日は息子の三年生の最後の日。
午後保護者会が開かれ、夏休みが始まった。
息子のクラスには、待ちきれずここ数日休みを取って家族旅行に行った同級生も何人いるようだ。
家族旅行に行きたいけど、最近の気温を見て思い止まった。
この町は涼しい方とはいえ、明日から33℃。
どこに行っても炎天下に間違いない。
うち三人とも熱に弱いから行かないほうがいいだろう。
しばらくのんびりして、8月ちょっと涼しくなってから帰省でもしよう。
ちなみに今日田舎は38℃らしい。トホホ。
圭兄が面倒見ている家にはいくつ修繕が必要だそうだ。
葬儀社に行って預かりカードの再発行を頼む。
そして妻の実家に伺って義父さん義母さんに孫の顔を見せてあげる。
2週間くらいで十分だろう。
そしてさすがにどこかに家族旅行に行きたいな。
余裕があれば考えておくか。

2023.07.17 果たして夜明けは来るのか。

仕事の仕上げが終わって、元社長が「次の案件の時は」なんとか言った。
もう次はないよ。
今すぐ「もう連絡をやめていただきたい」と言ってやりたいけど、来月の支払まで我慢しておこう。
仕事を片付けたとはいえ、すっきりした気が全然しない。
これからも闇雲に進むしかないからな。

情勢が悪化している一方だ。
国内では不動産バブル崩壊、生活費高騰、そして失業。
国際ではほとんどの国の敵に回り、なお挑発し続けている。
お偉いさん達は、目が見えないか、頭がめでたいか、今でもちゃんとした解決策を出さず、何やっているか全然わからない。
むしろ問題から目を背け、最初から「解決」なんて考えていないほうが納得する。
ならば、何か大事になっても、国民を保護する気は皆無だろう。
自分を、家族をどこまで守れるか、いつまでも心配しているだけだ。

妻はのんきなほうでいいけど、いざとなったら頼れない。
そして僕だけでは、できることが物凄く限られている。
今は大丈夫に見えるけど、食料の不足にでもなったら?
食料をなんとか貯めてもいいけど、電力や水道が中断でもしたら?
マンションのエレベータが運転中止にでもなったら?
小さくでもいいから、どっかに1階や2階、エレベータの必要のないマンションを買い取って避難所にしたいけど、そんなに都合よく見つからないな。
それにコロナの時にわからせてくれたように、この国では、避難所なんてないよ。
今ここにデウス・エクス・マキナが降臨しても、手も足も出せないだろう。
せめて夜明けを迎えるために、何かできることがないかを教えてくれたらいいな。
こんな不甲斐ない文字しか書けない僕には、何かできること、ないか。

2023.07.12 納品済み。

6月20日くらいからか。
昨日納品した分まで、12万文字ちょい過ぎ。
全部で1万元ーー20万円くらい稼いだ。
MTPEとはいえ、日英で特許。
いい価格だったよな。

用語の統一とか、クラウド翻訳ツールの使い勝手とか、どこからどこまでも最悪だったけど、何とか耐え抜いた。
昨日からずっと休んでも酷い吐き気と目まいがする。
終わってるから笑い飛ばしてもいい。
ただ笑えないのは、こんな仕事しかもらえなかった自分自身だ。

この前元社長に抗議したら、音声通話による打ち合わせは止めて下さって、ちゃんとメールでやり取りするようになった。
別の作業員にチェックを依頼して、修正箇所をまとめて送信してくるようになった。
少し楽になったとはいえ、この手の案件を平気で引き受ける自信が一切無くなっている。
少しでも他には案件があれば、こちらを引き受けずに済むことだけど、絶望的に、無い。

もちろん金を稼ぐことはすべてではない。
自分の生き甲斐はそれではないと信じている。
ただいつまでも自分の理想郷に引きこもっていけるように、体を壊さない範囲でもっと足掻いてみようか。